初めて『カルテット』の主要キャストを見た時、バランスの悪さを感じた。特に松田龍平(まつだりゅうへい)は主演クラスが揃っている中で、わざわざ出演するまでもない存在の俳優。そう思っていたのだが、時間が経つにつれてじわじわと彼を見てみたいという感情が高まってきた。
父は昭和のカリスマ、松田優作
このサイトで松田龍平について触れるのは初めてなので、ちょっとキャリアを振り返ってみようと思う。
いまさらな話題だが、父は松田優作だ。僕にとってはカリスマ。ハリウッドデビューとなった映画『ブラックレイン』(1989年)の公開直後に40歳という若さで死去。あれが彼の最高傑作とは思わないが、出演陣の中でひと際目立つ鬼気迫る演技を披露。これからの成功を約束させるものがあっただけに残念だった。しかし、この死が逆にカリスマ性を高めたともいえる。
デビュー時は線が細かった
それから10年後の1999年、松田龍平は大島渚監督の『御法度』で映画デビューを飾った。公開当時は高校生。佇まいに亡き父の面影はあったものの、ポキっと折れそうな線の細さが印象的だった。息子が表舞台に出てきてくれたうれしさがあった一方で、俳優業は続かないんじゃないかという不安もあった。
映画界で順調にキャリアを積む
ところが、そんな心配をよそに松田龍平は順調にキャリアを積んでいった。気が付けばイメージは「映画の人」。視聴率重視のドラマ界が肌に合わなかったのか、こういう歩み方もいいんじゃないかと思っていた。
民放の連ドラデビューはカルトな作品
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あらためてプロフィールを眺めてみたが、民放の連ドラデビューは『あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~』(2008年)だ。これは映画『蛇にピアス』で脚光を浴びる前の吉高由里子も出演し、カルトな雰囲気が漂う怪作だった。ただ、当時彼に何を感じたかはもう覚えていない。その後、気が付いたらNHKの『あまちゃん』(2013年)で若き日の父とは真逆の物腰の柔らかい人を演じ(演技派に転向した頃に雰囲気は近いか)、同年に公開された『舟を編む』では映画界の頂点を極めていた。
『営業部長 吉良奈津子』は物足りなかった
そして、一流の俳優にのぼりつめた松田龍平は昨年『営業部長 吉良奈津子』に出演した。これが物足りなかった。もちろん、彼なりによさは見せている。しかし、そこは不振のフジテレビ、実にもったいない使い方をしていたのだ。
『カルテット』では犯罪者の役?
さて、前置きが長くなったが、ここから『カルテット』の話題に移ろう。
主演は一応松たか子となっている。しかし、圧倒的な存在感を見せるのは満島ひかりだろう。旬の俳優、高橋一生はキレキレの演技を見せ、このドラマの中でも異彩を放つと思う。この状況で松田龍平はどのような存在感を示すのか。
噂によると『カルテット』は映画『テルマ&ルイーズ』(1991年)にヒントを得た話になるらしい。そう考えると、格上の松田龍平には犯罪者という重い役柄が与えられるかもしれない。あの涼しげな顔で連続殺人犯だったりしたら、想像するだけで背筋が寒くなりそうだ。脚本家の坂元裕二は過去に実在の事件を題材にした『それでも、生きてゆく』(2011年)を手掛けているし、あり得ると思う。
まあ、以上は僕の妄想。何はともあれ、今度こそドラマで松田龍平の力量を感じてみたい。
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