2015年春クールにおいて、最大の注目ドラマは堺雅人の『Dr.倫太郎』だろう。ヒロインはちょっと地味だが実力派の蒼井優。その他、新旧の女優が名を連ねる中、精神科医を主人公とするこのドラマの作風にハマりそうなのが酒井若菜だ。
彼女が最初に注目を浴びたのはグラビアアイドルとして。肌の白さや何ともいえない素人感、小柄でありながら出るところは出ているナイスバディに魅了された。ここで並みのアイドルだったら露出の機会が激増した後、あっという間に消えてしまう。しかし、彼女は違った。女優業に転身したのである。
転機は『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)や『木更津キャッツアイ』(2002年)などの宮藤官九郎作品。映画も数本見たが、独特の感性で演じていて非凡な印象を受けた。ところが、「いい女優になってきたなあ」と思っていた矢先、プツッと消えてしまったのだ。その辺りの事情についてはネット上で情報が載っていたりするが、ここでは触れない。
その後しばらくして、酒井若菜の書く文章が話題になっていた。本を執筆していたと思う。どんな文章を書くのか確かめるべく、僕は公式ブログを訪問した。とても繊細で心に突き刺さってくる。一つ一つ言葉を丁寧に選びつつ、自分の中から溢れ出る感情を絞り出しているようだった。しばらく、ブログを読み続けた。
いまあらためて出演作を眺めてみて、実は女優業のキャリアは途切れていないことがわかった。それでも表舞台から去ったように感じたのは、主演ができる女優でありながら脇役におさまっていたからだと認識した。
さて、前置きが長くなったが、『Dr.倫太郎』について書いていこう。役柄は堺雅人が演じる倫太郎の妹。結婚して子供にも恵まれ、パートの仕事をしながら堅実な生活をしているという設定だ。でも、完全に満たされた主婦の役ではないと思う。酒井若菜を起用するのだから、何かに傷付いているキャラクターが考えられる。脇役なので出番は少ないかもしれない。しかし、演技者としてはヒロインの蒼井優に負けない面を見せてくれるはず。ファンとしては、決して気負うことなく頑張ってほしいと願う。どんな感動を与えてくれるのか、彼女の出演シーンを見るのが楽しみだ。
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