夫役の宮藤官九郎がメイン、『カルテット』の6話が傑作の理由

『カルテット』の6話は再び視聴率が下落して7.3%になった。この回のメインキャストは巻真紀(松たか子)の夫役を演じた宮藤官九郎(くどうかんくろう)だ。別に人気俳優ではないし、内容的にも暗かったから視聴者が離れたのかもしれない。しかし、作品のクオリティはこれまでの中で最高だった。

これまでとは何かが違う

僕は『カルテット』を録画しているので、この記事を書くまでに6話を4回も見た。1回目は普通に感動。2回目以降は描かれている世界観がさらに深く心の中に入ってきて、何度も涙が溢れてきた。あまりに共感する部分が多く、これまでとは何かが違うとも感じた。

6話で初めて坪井敏雄が演出を担当

一つの理由として考えられるのは、第一章が終わり最終回に向けて坂元裕二の脚本に変化が表れたこと。そして、これが最大の理由だが、6話で初めて坪井敏雄が演出していることが関係していると思うのだ。参考のために、これまでの演出家を振り返ってみる。

1、2、5話:土井裕泰
3、4話:金子文紀
6話:坪井敏雄

ネット上の意見を見ると、宮藤官九郎の演技が評価されているようだ。しかし、僕はそうは感じなかった。決して彼が下手ということではない。坪井敏雄の緻密な演出の中で、宮藤官九郎はただの駒として存在している感じを受けたのだ。ここでは存在を主張し過ぎる役者は不要。例えば、星野源あたりも向いているように感じる。では、どうして夫役には宮藤官九郎が選ばれたのか。それは『カルテット』のチーフディレクターである金子文紀が関係していると思う。

金子文紀が宮藤官九郎に打診したか


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金子文紀は宮藤官九郎が初めて脚本を手掛けた連ドラ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)で演出を担当し、その後再び組んだ『木更津キャッツアイ』(2002年)で初めて連ドラのチーフディレクターを務めた人物だ。まさに宮藤官九郎と共にドラマ界を歩んできたともいえる。別に候補はいくらでもいたはずだが、このように特別な関係にあるので出演することになったのだと思う。

宮藤官九郎は土井裕泰が演出する『カルテット』の5話で初登場し、6話は組織上の部下となる坪井敏雄が演出した。金子文紀は宮藤官九郎のキャスティングに関わっただけで、あえて演出はしないのかもしれない。

坪井敏雄はそぎ落としていく演出が特徴

坪井敏雄の演出は、これまで以上に説明的な描写を省き、どのシーンをとっても完成度が高かった。クライマックスはマスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ 間奏曲』が流れるシーン。二人の関係は始まりも終わりも(今後の展開はまだわからないが)、この曲が象徴的な役割を担っていた。

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マスカーニの曲は『ゴッドファーザー PART III』でも使用

『カヴァレリア・ルスティカーナ 間奏曲』はどこかで聴いていたのだが、なかなか思い出せなかった。僕はクラシックやオペラに精通しているわけではないので映画のはず。そこで調べたら、この曲が使われている二つの映画を見ていた。一つは『レイジング・ブル』(1980年)。もう一つは『ゴッドファーザー PART III』(1990年)。結局、後者の記憶であることがわかった。当時、映画自体は酷評されていたが、僕は悪い印象を持っていなかった。おそらく、この曲が使われたシーンが心に残っていたからかもしれない。

坪井敏雄には映画を撮ってほしい

さて、話がそれたが、あまりに坪井敏雄の演出が素晴らしいので、彼が手掛けたドラマを調べてみた。見た作品は15本くらい(記憶が曖昧)。しかし、『カルテット』の6話で描かれた世界観を感じた記憶がない。どこで何があったのか。結局のところ、肝心な部分は何もつかめなかった。

ただ、今後のことで坪井敏雄に期待したいことがある。それは映画を撮ってほしいことだ。視聴率が低い回の演出家なので、興行的に成功するような映画は撮れないかもしれない。しかし、名作を生み出してくれるような気がするのだ。例えば、キネマ旬報ベスト・テンに選ばれるようなイメージの作品。あるいは今回の仕事を受けて、脚本・宮藤官九郎、監督・坪井敏雄という新しいコンビで思わぬ傑作が誕生するかもしれない…。

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